ビザ【V】、アルトリア【MO】に続いて3つ目のアメリカ個別株として、マクドナルド【MCD】を13株(約30万円分)購入しました。
言わずと知れた世界展開するファストフードチェーンで、アメリカ株の鉄板銘柄でもあります。
自分は日本にいた時よりも、フィリピン駐在時のほうがマクドナルドにはお世話になりましたw
連続増配も43年を記録しており、あのリーマンショック時に大方の株価が半減する中、20%程度しか株価が下落しなかった事からも最強のディフェンシブ株の呼び声高いです。
多くのETF銘柄にも組み込まれているマクドナルドですが、インデックスの平均リターンを超えるパフォーマンスを持っている事から、個別株として購入しました。
小ネタでフィリピンのマクドナルドメニューを挟みつつ、マクドナルドの銘柄分析をしてみました。
マクドナルドの事業内容
ハンバーガー、フライドポテトを始めとしたファストフードを全世界で展開しており、飲食のカテゴリーに限らずその知名度は圧倒的です。
2018年末時点の全世界のファストフード店約900万店舗、売上約140兆円のうち、マクドナルドが占める割合は各々0.4%、7.1%にものぼります。(従業員数は約210,000人)
マクドナルドの運営形態は直営店型とフランチャイズ型に分かれており、世界120ヵ国に37,855店舗あるうちの35,085店(約93%)がフランチャイズ型店舗です。
マクドナルドのフランチャイズ方式では、ハンバーガーの材料だけでなく、本部が店舗物件を揃え、それに利益を乗せた形でフランチャイジー(FCオーナー)に貸し出す形式から、マクドナルドの本業はハンバーガー屋ではなく、不動産屋であると言われている事は有名です。
店舗貸し出しの不動産収入以外にも、フランチャイジーがあげた売上の一定の割合をロイヤリティーとして徴収します。
またマクドナルドのフランチャイズ契約では、フランチャイジー側で人件費や店舗運営費用などの固定費を負担する事になるので、直営店と比べ抜群に利益率が高くなります。
このフランチャイズ経営での収益率がいかに良いかは、マクドナルドの年次報告での数字で読み取ることが出来ます。
マクドナルドが負担している直営店とFC店の経費比較
直営店ではザックリ売上の20%弱、フランチャイズでは約80%が利益になっています。
マクドナルドは長期的にこのフランチャイズの割合を現行の93%から95%まで上げていくことを掲げており、更なる利益率の向上と効率化を図っていく方針です。
飲食業界は参入障壁が低く、後発の新鋭企業に営業形態をコピーされがちですが、マクドナルドはしっかりと独自のワイドモートを築き上げています。
安くて早いファストフードはいくらでもありますが、ほぼ世界共通でハンバーガーの味が同じで、あらゆる人がハンバーガーで連想した時にまずマクドナルドが思いつくように、その統一性、認知力、ブランド力は突き抜けています。
自分も小さいころから色々なファストフードを食べてきており、マクドナルドより美味しいと言われているモス・バーガーやフレッシュネスバーガーも一時通いましたが、結局最後はマクドナルドに落ち着きました。
味の好みは人それぞれですが、なんというか小さいころから無意識のうちに食べていたマクドナルドの味が体に浸透しているって言うんですかね、タバコやコカ・コーラのあの中毒性と似たようなモノで、マクドナルドのあの味を代替えできるジャンクフードが存在しないんです。
どこの国にいっても良く見るCM効果も大きいと思うんですが、味だけでなく、世界規模で「ハンバーガー=マクドナルド」の図式を定着させているマクドナルドのブランド力も絶大だと思います。
このブランド力があってこそ成り立つ「ロイヤリティー収入」+「不動産収入」で、強固な財務基盤と収益性を確立し、常に膨大なキャッシュを生み出す事ができるマクドナルドのシステムは、まさにワイドモートを持つ企業と言えるのではないでしょうか。
長年に渡り築き上げてきたノウハウ・コスト力・ネットワーク力・ブランド力は、新興ファストチェーンが多少健闘した位ではビクともしないです。
マクドナルドはまさにウォーレン・バフェットの下記名言が当てはまる企業です。
和訳:私はバカでも経営できる素晴らしい事業をもった株を買うようにしています。なぜなら遅かれ早かれバカが経営する事になるからです
マクドナルドの創業を描いた映画「ファウンダー」のエンディングで、「毎日世界人口の1%がマクドナルドの商品を食べている」という説明が流れた時は、妙に納得感がありました。
マクドナルドの国別売上構成
下記はマクドナルドの2018年 Annual Reportに載っている地域別の売上構成です。
発展途上国での売上が伸びていると思いきや、本国アメリカと欧州やカナダといった先進国(Lead Markets)の売上割合が伸びています。
最大マーケットの中国事業については、2017年に現地の中国中信(CITIC)に52%の株式を、米国カーライルグループに28%を売却しており、マクドナルド本体は残り20%の株式を保有しています。
マクドナルドは米国企業でもいち早く中国進出を果たした企業ですが、中国市場での売上鈍化、中国という国でビジネスをする事のリスクを考慮し、中国からのビジネスの切り離しも他企業に先駆けて行っています。
ただ、中国から撤退したというわけではなく、今後20年間において、マクドナルド本体は中国国内の売上の一定率をロイヤリティーフィーとして徴収できる契約を結んでいます。
売上比率におけるFoundational Markets(その他)は2018年現在で10%満たない事から、今度アジアやアフリカ等のフロンティア市場攻略によっては、まだまだ売上を伸ばしていける可能性は十分残っています。
ちなみに以前駐在していたフィリピンのマクドナルドでは、日本では見た事もないメニューがいくつかありました。
代表的な2点が、マッシュルーム・ペッパーステークとマック・スパゲッティです。
各々ドリンク付きで約200円(90フィリピンペソ)とフィリピン人でも求めやすい価格帯で、味もフィリピン人好みの甘ったるい濃い味に仕上がっています・・・
マクドナルドはお決まりのハンバーガーだけ作っているのではなく、その国のテイストに合ったオリジナルメニューも提供しているんですね。
IT化とデリバリーサービスの強化
時代の流れに合わせ、マクドナルドもIT技術の活用を積極的に進めています。
グローバルで統一されたモバイルアプリ、17,000店舗に設置されたキオスク(セルフ注文端末)、モバイル注文・支払いによるキャッシュレス対応等が急速に普及していっています。
2018年次レポートでは、フランス、イタリア、スペインではレストラン訪問客の注文の半分以上がキオスク端末を通じて行われているとの事です。
人件費の削減だけでなく、業務効率をあげる効果が出ています。
キオスク端末の導入については、先進国以外でも想像以上に進んでおり、フィリピンのマクドナルドでもキオスク端末が導入されていたのには驚きました。
フィリピンのマクドナルドに設置されたキオスク端末
またマクドナルドはデリバリーサービス対応型の店舗を増やしており、全世界の店舗の半数以上で対応できるようになっています。
アメリカやフランス、イギリスの主要国では、このデリバリー型の販売額が2桁%の成長をみせており、また主要国の販売額の10%程度を占めるようになっています。
マクドナルドは自社だけでなく、Uber【UBER】へもデリバリー業務(ウーバー・イーツ)を外注しており、利便性の追求にも余念がありません。
共に世界展開している2大企業がこのようなシナジー効果を発揮してくるんですから、新興ファストフードチェーンがマクドナルドからシェアを奪還するのがいかに難しいか分かります。
マクドナルドの売上・利益・各種財務データ
▪ティッカー:MCD
▪1株配当:4.64ドル
▪配当利回り:2.11%
▪PER:28.90倍
▪EPS:7.61ドル
▪ROE:N/A
▪連続増配:43年
▪配当月:3、6、9、12月
▪上場先:NYSE(ニューヨーク証券取引所)
※2019年9月8日現在 / Yahoo Finance
直近10年間のチャートです。
PERは30倍弱に上昇しており割高感は否めませんが、安くなった時に仕込もうと考えてると、いつまで経っても買い場が訪れないようなチャートです。
チャートはVISA【V】に似た、文句のつけようがない綺麗な右肩上がりです。
引用:Yahoo Finance 10年チャート
マクドナルドの株価で見逃せない点は、やはりリーマンショック時に明らかになった暴落耐性でしょう。
ほとんどの株が株価半減する中、マクドナルドの株価は最大約20%程度しか下落落しませんでした。もはや債権並みの強さです。
リーマンショック前の株価に戻すまでにかかった時間も約1年半で、ディフェンシブ株で有名なコカ・コーラ【KO】やジョンソンエンドジョンソン【JNJ】よりも短時間で株価を戻しています。
過去10年のS&P500との比較でも、2倍以上のリターンを叩き出してます。
S&P500指数との比較(青:MCD、緑:S&P500)
■マクドナルドの売上・利益推移
売上の減少は直営店の比率を落とし、フランチャイズ店を増やしている事が原因ですが、一方で営業利益、純利益は上昇しており、直近の営業利益は40%を超えてきてます。
外食産業でこれだけの好収益をあげられているのは、前述したロイヤリティーと店舗賃料が大きく、直営店のみでハンバーガーだけ売っていたのでは、とてもこのような数字を残す事は出来ません。
マクドナルド 売上・利益推移(10年)
■マクドナルドのキャッシュフロー推移
2014年頃から営業CF、フリーCF共に微減傾向でしたが、2018年に実施されたアメリカの法人税減税やフランチャイズ化の加速等あり、ここにきて再度上昇しています。
またキャッシュフローマージンも以前から常時25%を超えており、外食産業とは思えない高水準を保っています。
マクドナルド キャッシュフロー推移(10年)
■マクドナルドの1株配当・配当性向・増配率推移
毎年着々と増配を重ね、連続増配回数は43回を記録しています。
約10年で1株あたりの配当金は約2倍になっていますが、配当性向は現在60%弱なので、まだまだ増配余地を残しています。
常に株価が上がり続けている為、配当利回りは2%ちょいと物足りない感じですが、着実な増配とキャピタルゲインも狙える事を考えたら、十分すぎる位だと思います。
アメリカ優良株でおなじみの自社株買いにも積極的で、長期ホルダーは安心して保有し続けられますね。
マクドナルド 1株配当・配当性向・増配率推移(10年)
■マクドナルドのEPS・BPS推移
BPSがマイナスになっているのは、借金して自社株買いしている事が要因です。低金利の今だから出来る事で、経営上問題があるわけではないです。
EPSは順調に右肩あがりで推移しており、文句なしです。
マクドナルド EPS・BPS推移(10年)
まとめ・映画「ファウンダー」は必見
死角らしい死角が見当たらないような銘柄ですが、マクドナルドのビジネスは「ブランド力」の上に成り立っているビジネスなので、今後マクドナルドのブランド力を脅かす競合や、そのブランドを棄損するような出来事が発生すれば、状況は変わってくるかもしれません。
マクドナルドのブランド力が失われれば、FCオーダーはわざわざ高額なロイヤリティーや賃料を払ってまで、マクドナルドとフランチャイズ契約をしなくなり、それはつまりマクドナルドがドル箱を失うという事だからです。
ただ、目先そのような脅威となる存在は見当たらないので、VISA株同様コツコツと折をみて買い増し&ホールドしていきたい数少ない個別株ですね。
最後にThe Founder(ファウンダー)という映画を紹介します。
この映画はマクドナルドの創業からアメリカ全土へチェーン展開するまでを描いた映画なんですが、ザックリ説明すると創業者のマクドナルド兄弟が生み出した現在のマクドナルドの”ベース”を、うだつのあがらない訪問販売営業のレイ・クロックが乗っ取る話です。
この映画、マクドナルド的に放映許可しちゃっていいの?っていうくらい、倫理的に抵抗がある映画です。この映画見たら、マクドナルドの株どころか、今後マクドナルドのハンバーガーが嫌いになってしまうかもしれませんw
良く言うとでアメリカンドリームを描いた映画で、悪く言うと資本主義のエゲツなさを描いた映画です。
賛否両論あるにしろ、田舎のローカルハンバーガーショップだったマクドナルドを、今や世界120ヵ国、売上220億ドルを誇る世界最大のハンバーガーチェーンに仕立て上げた男の話は、マクドナルド株の保有者じゃなくても必見です。
作中でマクドナルドを全国チェーン展開をするにあたって、「不動産(店舗)を押さえる事がチェーン展開のキーポイントである」というシーン出てきます。
現在のマクドナルドの核でもある不動産ビジネスを創業当時から取り入れていたことには、驚かされました。
企業イメージ向上を狙ったマクドナルド万歳映画ではなく、資本主義のエゲツなさをマクドナルドというアメリカの象徴を通して感じる事が出来ます。
一見の価値ありです。